this broken heart

切ない夢を見た。

真っ暗闇の夜の中、無限に広がるスタンドの敷地内で、給油機がデタラメな位置に乱立して数字を発光している。僕はそこら辺でタオルを集めて洗ったりたたんだりして黙々と働いていた。

仕事が終わり、そのまま社員と旅行することになり、山の上の宿泊施設へと向かった。

目的地に着いてみると、そこには僕の家族や親類、友人等が全員集合していた。何がなんだかわからないでぼんやりしていると、僕は注目の的となり、祝福されていた。ビッグサプライズ。

どうやら僕は結婚するらしい。知らない間に決められた。相手は、仕事の重要な取引先であるK組の社長の娘である。まだここには来ていないが、これからすぐ式をあげるらしい。

式場は、この宿泊施設がある山を少し下ったところにある小高い丘である。準備はまだ進行中である。ということで、僕も手伝わされて、宿泊施設と式場を行ったり来たりした。とっくりとおちょこを持って。

そこへとうとう僕の花嫁が、その両親と共に現われた。日本人だけどロシア人みたいで、うまく言えないけど変な顔だった。ますます複雑な心境になってきた。

やっぱり遠くへ逃げようと思い、裏の階段をずうっと下って、小さな橋を渡って、走り続けた。

しかしいつの間にか式場へと向かう両家の行列の中に合流してしまっていた。ちゃんと袴を着て花嫁の手を握り歩いている自分の姿を見て、うわあなんか絶望的な気分だなあと諦めそうになった。

すると、ずっと向こうに見える山の竹藪がガサッと音をたてて揺れた。また揺れた。だんだん激しくなっていく。ガサッガサッガサッと大きな範囲で縦横無尽に動く何かがいる。行列がざわめいている。天狗?

次の瞬間、無数の瓦が、こっちをめがけてすごいスピードで飛んできた。

ひぃいいいい
きゃああああああ
うわぁああああ
ぎゃああああ

今まで聞いたこともない生々しい叫び声が起こっては、すぐに消えていく。飛んでくる黒い瓦は正確に、ひとつずつ、行列に参加している人々の首を刎ねていった。

天狗は、実は昔から僕の心の友なのだった。僕の気持ちを察してやってくれたのだろう。でも、やりすぎだ。

僕は花嫁だけは助けてやろうと思って、制止しようとした。だが、それは目の前に彼女の首が転がった後だった。

なぜ助けようとしたかというと、手を握って歩いているうちに彼女の優れた性質がじわじわと伝わってきて、少し好きになってきて、これから一緒にどこかへ逃げてもいいかなあと思い始めていたからだった。

たくさんの恐怖に歪んだ顔が転がる中で、彼女の無表情な顔はとても美しかった。