南国

風に吹かれるといやな気分が吹っ飛ぶ。冷たくても良い。風は良い。
遠いところにある町にでかける想像をする。想像の旅。
そうすると、その旅の中、こんなにさっぱりとした平穏そうな町にもドロドロとした争いごとは起こっているのだと聞き、意外に思う。
人ごとではない。僕だって渦中に投げ込まれたら、同じように悩み、怒り、憎しみで頭がいっぱいになるのだろう。
そういう苦しい感情にいちいち囚われなければ、きっとすばらしい毎日なのだろう。この町はパっと見そういう風だったのだけれど、そういうわけにはいかないのが世の常だ。パッケージどおりというわけにはいかない。中に頭を突っ込めば、どこでも面倒なことばかりだ。これは一体どういうことだ。どうしようもないことだ。
そういうことを忘れるために旅にでるのか?その場所で目をそらし続けるのか?
荒野に意識を飛ばすため、風に吹かれるのか?忘れさることが可能か?
場所だけじゃなく、時代にしたってそうだ。こんなに便利になったのに、苦しい人があんまり減っていないようなのは何故だ?
一番大事な問題に対応できていないからではないのか?諦めたり曖昧な解答に納得したり笑ってごまかしたりしてるうちに過ぎていく。